【報告書】INWES-APNN 2018 Conference in Ha Noi 2018年10月18-20日

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JWEF個人会員 森下あや子

INWESの地域ネットワーク会議であるAPNN (Asia & Pacific Nations Network) の第8回目となる国際会議が2018年10月18-20日にベトナム・ハノイで開催された。本会議は、アジアの女性科学者や技術者が研究成果や政策、および最新の情報を交換するための場として、毎年異なる加盟国で開催される。ハノイ会議の参加者は16ヶ国から320名(海外からの参加者70名)で、過去最高との発表があった。最終日の10月20日は「ベトナム女性の日」でもあり、会議は国を挙げて注目された。

 

日本からの参加者(順不同、敬称略) 計14名

女性科学者の会:大倉多美子、功刀 由紀子、野呂知加子

女性技術士の会:井本 郁子、木村了、宮地奈保子

日立技術士会(技魔女):飯泉紀子、千木良美由紀

日本女性技術者フォーラム:菅原香代子、中野亜求了、永合由美子、仁田工美、山口理栄、森下あや子

 

   日本からの参加者とベトナム人スタッフ

1) 一日目:10月18日

ベトナム女性連合(Vietnam Women's Union, VWU)会長Dr. Nguyen Thi Thu Ha、ベトナム科学技術省 副大臣Dr. Tran Van Tung、INWES会長 Gail Mattson、INWES-APNN議長 Dr. Chia-Li Wuによるスピーチで開幕した。

続いて、各国からのカントリーレポートである。日本からは、山口理栄氏より、INWES-Japanの活動、日本の女性研究者ジェンダー平等の目標と現状、STEM教育の支援強化等が報告された。また、最近問題となった医科大学入学試験での男女格差について話題提供があった。会場からは、医科大学問題についてのアクションプランや、アクションすることで良い契機になるのではないかという意見があった。また、少子高齢化の対策はどのように考えているのかという質問も出た。

(詳細はhttps://youtu.be/y8h9dBhd_co からご覧ください)

 

カントリーレポートを発表する山口理栄氏(右)。熱心に聞き入るVAFIM会長(中)とAPNN議長(左)

夕刻から、ベトナム女性博物館に移動。結婚、出産、家族の生活などの儀式や習慣、戦争中の様子を見学した。博物館広場で開催されたVWU主催のガラディナーに参加した。

 

ベトナム女性博物館で説明を聞く参加者。ガラディナーのため、着物を着ている日本人参加者。

2) 二日目:10月19日

午前中には、3つのテーマでワークショップが同時に開催された。筆者は、②栄養と食物安全のセッションに参加した。愛知大学の功刀教授より、「日本の食品安全システム-特徴と課題」と題して、安全システムの特徴と課題について発表があった。モンゴルからは、ジャンクフードの普及などの食生活の変化による肥満の問題、ベトナムからは、安全性の試験方法や、有機食品の生産について発表があった。安全な食品と水は、重要な課題であり、都市部と農村地域での安全性への関心の相違、安全な有機食品のコスト高の認識など、活発な議論がなされた。

<ワークショップテーマ>

① 第4次産業革命時のサイエンスとテクノロジーにおけるジェンダーとジェンダー平等

② 栄養と食物安全

③ 災害リスクマネジメントと気候変動適応

午後からは、ベトナムの国連女性代表による「ジェンダー視点の災害リスク軽減および気候変動適応」、マレーシアのLeadWoman 社CEOによる「女性役員のためのキャリア支援」に関する発表があった。

その後、クロージングセッション。ここで、ハノイ宣言が承認された。女性科学者とエンジニアの経験を共有すると共に、地域と世界の発展に貢献し、国連の持続可能な開発目標を実現するために、協力関係を強化するという主旨である。他に、2019年開催国はネパール(カトマンズ)。フィリピンとミャンマーがAPNN新メンバー国として紹介された。

すべてのプログラムが終了し、VAFIW(Vietnam Association for Intellectual Women)主催のFarewell partyが開催された。APNN表彰、ベトナム女性科学技術者への表彰、民族芸能、(スポンサー企業による)ファッションショーなど、豊かなおもてなしで、各国からの参加者と親交を深めた。

3) 三日目:10月20日

ニンビン省チャンアン(Trang An)世界遺産を訪問した。私たちが分乗した2台のバスは、道中パトカーに先導されるという高待遇。残念ながら雨天のため川下りはできなかったが、東南アジア最大規模のバイディン寺を拝観。ニンビン省人民委員会主催の昼食パーティーで締めくくった。

【感想】

初日に配布された予定表には“October 17th version”と開催前日の日付があり、直前まで予定が検討されたようでした。運営面での課題はあったと思います。しかし、空港でのピックアップから始まり、食事やお土産の配慮、趣向を凝らしたFarewell Party、親しみやすい笑顔で迎えてくださったベトナム主催者のホスピタリティーが随所に溢れていました。

路上には、バイクに生花をいっぱい積んだ「花売り」がたくさん並んでいました。10月20日「女性の日」には、男性が女性に花束やプレゼントを贈る習慣があるそうで、ハノイではこの時期、花束が大量に売れるそうです。ベトナムは、3月8日にも「国際婦人デー」を祝います。羨ましいです。

ベトナム女性科学者・技術者は成果を挙げているが、仕事も家事も担う彼女たちは、男性の2-3倍の努力をしているという報告が科学技術省 副大臣(男性)からありました。就業している女性は多いが、高いポジションにつけないというのも、日本と事情が似ています。

ハノイの街は、経済が急速に発展している国ならではの躍動感と力強さが感じられました。アジア諸国の変化のスピードには驚かされます。世界の中で、存在感を失っていく日本。この会議でも不安を感じました。制度はできても、進みが遅い日本のジェンダー平等への歩みです。不満を言っても、傍観していても、変わりません。私たちが、動き出さなくてはなりません。

 

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