【報告書】2015年度JWEF女性技術者に贈る奨励賞授賞式と記念シンポジウム

点線

JWEF運営委員 長曽我部 紀理子

『現場でいきいきと活躍する女性技術者からのメッセージ』

「公共放送を支える技術」〜楽しく社会に役立つ〜
「新規プロジェクトへの挑戦」〜仕事とプライベートの相乗効果〜

日時:2015年10月12日(祝・月)13:30-16:40
場所:東京大学本郷キャンパス工学部11号館講堂

JWEF奨励賞受賞者および受賞記念講演者:諸岡 志保さん

日本放送協会 技術局・番組施設部
受賞記念講演タイトル:「NHKの放送を支える技術の仕事」

JWEF奨励賞審査員特別賞受賞者および受賞記念講演者:矢野 智子さん

コクヨ株式会社 ステーショナリー事業本部 事業戦略部 ネットソリューションVU ネットステーショナリーグループ グループリーダ
受賞記念講演タイトル:「『CHANCE』が支える新規事業プロジェクト」

記念シンポジウム基調講演者:児玉 圭司氏

日本放送協会技術局専任局長
基調講演タイトル:「新たな可能性を開く放送・サービスの創造」

司会:山口理栄(JWEF運営委員)
参加者:個人会員16名(1名),一般28名  合計44名 ():学生うち数

夏の暑さも和らぎ徐々に涼しい季節となった2015年10月12日に、2015年度JWEF奨励賞受賞式、記念シンポジウムおよび懇親会を開催しました。本年度のJWEF奨励賞受賞者は、日本放送協会にて放送設備の開発・整備における第一人者としてご活躍されている諸岡志保さんです。また、本年度新設しました審査員特別賞の受賞者は、コクヨ株式会社にて新規商材の企画・開発のグループリーダーとしてご活躍されている矢野智子さんです。


画像:受賞者を囲んで1
JWEF奨励賞受賞者の諸岡志保さん(中央) 基調講演者の児玉圭司氏(下段左)
山下和男様(諸岡さんの推薦者、上段左) 吉田征彦様(人事担当者、上段右)
金田JWEF運営委員長(下段右)


画像:受賞者を囲んで2
JWEF奨励賞審査員特別賞受賞者の矢野智子さん(中央)
長司重明様(矢野さんの上司、左)
金田JWEF運営委員長(右)

 奨励賞受賞式では、金田JWEF運営委員長より受賞者の発表と共にその受賞理由の報告がありました。諸岡さんは、不規則な勤務・緊急対応などが必要となるハードな仕事環境の中で、仕事を達成することへの熱意や覚悟を持ち続け、周囲との協調・連携に大きく貢献した点、さまざまな制度やサービスを柔軟に使いこなし、仕事にも、様々なライフイベントにも、積極的に且つしなやかに対応されている点がロールモデルにふさわしいという理由で高く評価され受賞に至りました。また、本年度は、非常にレベルの高い選考となり、選考過程で、もう1名審査員特別賞を差し上げたいということとなりました。特別賞受賞者の矢野さんの受賞理由としては、新規事業商品の企画開発におけるプロデューサーとして社内外の関係者との協調連携、メンバーとのコミュニケーションを活性化させ、業務変革へ貢献した点、労働組合の執行委員支部長として組織の風土改革にも注力された点が高く評価され受賞に至りました。

 また、本賞の創設者であり基金を拠出頂いたJWEFアドバイザリーボードである都河明子先生からのメッセージが金田委員長より読み上げられました。本賞の創設経緯、働く女性をとりまく世の中の動向、JWEFや女性の活躍への期待についての想いを添えて、お祝いの言葉を頂きました。


画像:金田JWEF運営委員長登壇中の会場風景

金田運営委員長より、諸岡さんへ賞状、楯と副賞(10万円)が贈呈されました。続いて、矢野さんへ賞状と副賞(卓上型置時計)が贈呈されました。続いて、昨年の受賞者の株式会社デンソーの寺本年世さんからのお祝いとして、花束とメッセージが贈らせました(代理贈呈)。最後に、本定例会の後援でもあり、外部アドバイザリーボードの経済産業省大臣官房審議官の保坂様より頂きましたお祝いのメッセージが司会より読み上げられました。

日本放送協会諸岡志保さんの受賞記念講演のタイトルは「NHKの放送を支える技術の仕事」です。現在入社14年目の諸岡さんは、保守メンテナンスの仕事や運用の仕事を経て、現在の部署にてシステムの開発整備を担当しています。開発整備の仕事は、放送を止めることなく新たなシステムへの移行をスムーズに実施する必要があり、そのための試験も膨大な数に及ぶものですが、試験内容によっては、深夜から早朝にかけての数時間しか作業ができないものもあり、15:00に出勤して翌朝8:30に退社するという夜間勤務体制になることも多くあるお仕事とのことです。最近の関わったプロジェクトは、2011年4月に生まれ変わったBS1とBSプレミアムへの切り替えで、社内外関係者が100人以上を超える大プロジェクトでした。諸岡さんの推薦者である山下様よりQ&Aの時間帯にコメント頂きましたが、関連区の調整が非常に大事であり且つ難しい仕事とのことで、諸岡さんの持ち前の推進力やコミュニケーション力で成功に至ったのであろうことが想像できました。というのも、諸岡さんが仕事で大事にしているキーワードを4つ挙げており、「何でもやる」「出来ない理由はない」「やり方は自由自在」「コミュニケーション」とのこと。特に「何でもやる」について、経験や失敗から学ぶことは多いので、何度でも立ち向かっていくと説明を添えていました。


画像:ご講演中の諸岡さん

 そんな大変忙しいお仕事をされている諸岡さんですが、入社2年目に第1子を出産し、現在小学生と保育園児のお子さんがいらっしゃるとのこと。夫婦共に仕事と子育てを両立し、ご実家の協力を得て邁進してきたそうです。また、シフト勤務で夜間勤務もあることから、22時まで対応している学童や夜間保育園、ベビーシッターを活用するなど、その時々で仕事との両立をはかるべく柔軟な対応を実施しています。家では仕事の顔ではなく妻であり母である顔で家族と接し、お子さんと同じ趣味を持つことでお子さんの今を見つめることを大切にしているそうです。  仕事に対しても、家庭に対しても、変化に対して前向きに柔軟に取り組む姿勢を終始感じる諸岡さん、現在は2020年の東京オリンピック、そして2025年のNHK放送センター移転を視野にプロジェクトに取り組んでいるそうで、聴講しながら非常に勇気づけられると共に、諸岡さんの今後のさらなる飛躍がとても楽しみに感じました。

続いての講演は、コクヨ株式会社矢野智子さんです。受賞記念講演のタイトルは、「『CHANCE』が支える新規事業プロジェクト」です。矢野さんがグループリーダーをされているネットステーショナリーグループは、ノートの様なアナログなステーショナリー(文具)とインターネットを融合することでより便利に使いやすくなる様なサービスを考えている部署とのこと。2014年発売のデジタルノート「CamiApp S」は、矢野さんがプロジェクトの企画開発を担当した商品で、ノートに書くだけでデータがクラウドサービスへアップロードするシステムで、ノートを持ち歩かなくともいつでもどこでもノートを見返せる様になります。新規のプロジェクトであり、企画開発フローのひとつひとつがハードルとなり、社内外の連携、合意形成が難しかったとのこと。担当者同士で要求のぶつけ合いになりがちなところを、企画開発担当者が間に入ることで要求を幾度となく聞きながら調整していきます。コクヨ社内には「ギブギブギブテ」という言葉が浸透しているそうで、この言葉は「Give&Take」が語源なのですが、3回Give(ギブ)してやっと1回のTake(テ)があるという意味だそうで、正確な情報を提供し続けることで1つの成果になるという心構えとのことです。


画像:ご講演中の矢野さん

 新規プロジェクトで非常に骨の折れる仕事をされている矢野さんですが、休日は絵をかいたり文字を習ったり走ったりすることで、仕事を離れ、頭と体のリフレッシュを意識しているそうです。また、労働組合の執行委員も担当している矢野さんですが、自社工場見学会やスキルアップセミナーを開催することで、社内の風通しを良くし、個人の成長及び企業の成長へとつなげる活動をしているそうです。 今後の展望もお話し頂きましたが、さらに新規プロジェクトを推進していかれるでしょうし、ご結婚されたばかりで様々なライフイベントが待ち受けると思われますが、どちらも「ギブギブギブテ」の精神で、粘り強く取り組む矢野さんの姿が思い浮かびました。

最後の講演は、基調講演として日本放送協会技術局専任局長の児玉氏よりご講演頂きました。タイトルは、「新たな可能性を開く放送・サービスの創造」です。NHKは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、様々な映像技術の革新を目指して取り組んでおり、その主な技術をご紹介いただきました。まず、「8Kスーパーハイビジョン」です。超高性能・高画質テレビのことで、画素数が水平7680×垂直4320の画素数で、現在のフルハイビジョンの16倍に相当し、より細かくきれいな映像となります。またフレームレートが現状の30枚/秒から、60枚/秒に加えて、最大で120枚/秒となる超高精細な表示を実現するそうです。また同時に、音響システムとしては、22.2マルチチャネルとなり、360°の臨場感のある音を再現するそうです。そして、テレビとインターネットを連携させた「ハイブリッドキャスト」の高度化により放送と通信が同期したリアルな情報を提供することやインターネットを活用した情報発信の充実により、テレビ離れが広がると共に急速なインターネットへの接続時間拡大といったメディア環境の変化に対応し、公共放送から公共メディアへと革新していくそうです。


画像:ご講演中の児玉氏

また、日本放送協会でのダイバーシティへの取り組みについても触れられ、2年前にワークライフバランス推進事務局が設立し、長時間労働が多かった状態を見直し、育児や介護への支援制度の充実、女性管理職の割合についても数値目標を掲げた取り組みなどを進めているとのことです。

最後に、2名の受賞者の益々の活躍と、本フォーラムの活動と相まって活躍する女性技術者がさらに輩出されることを祈念頂きました。児玉様ありがとうございました。

 基調講演の後は、短い時間ではありましたが、懇親会を開催しました。受賞者の関係者も多く集い、矢野さんがご担当された「CamiApp S」を体感することもでき、非常に闊達な意見交換の場となりました。


画像:懇親会風景

参加者からの感想

奨励賞受賞者から溌剌パワー

JWEF個人会員 森田小百合

JWEF会員となって長野県上田市から奨励賞授賞式&講演シンポジウムに初めて参加させていただきました。

常に日々の業務に直面し力強く活躍されている、受賞された諸岡様、矢野様お二方のお話に大変パワーをいただきました。何よりも大きな共通なパワーは、元気で、楽しく、前向きに溌剌とした女性技術者の笑顔だと再認識させていただきました。また、シンポジウムでご講演いただいた日本放送協会、児玉様のお話は、放送技術の歴史から現在の最先端8Kスーパーハイビジョンまで、大変分かりやすい解説で非常に勉強になりました。また社を挙げて女性の活躍推進を積極的に取り組まれていらっしゃる仕組みと、それに伴った社員の意識向上も合わせて推進されていらっしゃることについても大変感銘を受けました。非常に学びの多い授賞式とご講演に参加させていただきました。

今後もJWEFへの参加を積極的にさせていただき、地方で元気でパワフルに活躍している女性技術者の方々にも、JWEFの力強い取り組みを広く紹介していきたいと思います。

JWEF奨励賞授賞式に参加して

佐藤 加那子

弊社の所長から授賞式が行われるとの情報をいただき、初めて参加させていただきました。

受賞者の諸岡さん、矢野さんの活躍されているお姿に加え、運営サイドの女性達の芯の強さと柔らかさに触れ、性差を超えていくには発信していくことが重要であり、かつ自身も当事者なのだと認識し直す機会をいただきました。また、授賞式には女性参加者が多く、それが自然に映っておりました。しかし、自社の朝礼に出席し、自分が男性ばかりの集団に属していることを再認識いたしました。

女性の活躍が当たり前になるには、JWEFのような場に参加し、働く事に対するフラットな認識を自分の中で持ち続けることが重要だと感じております。今後も参加させていただきたく思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


爽やかな秋晴れの10月12日、東京大学工学部11号館講堂にて、2015年度JWEF奨励賞授賞式および記念シンポジウムを開催しました。44名の方に参加いただきました。

プログラム

『現場でいきいきと活躍する⼥性技術者からのメッセージ』

  • 13:30-13:55
    JWEF奨励賞、審査員特別賞受賞者発表と授賞式
  • 13:55-14:50
    【受賞記念講演】
    NHKの放送を支える技術の仕事」日本放送協会 諸岡 志保氏
    「『CHANCE』が支える新規事業プロジェクト」コクヨ株式会社 矢野 智子氏
  • 15:00-15:45
    記念シンポジウム講演
    「新たな可能性を開く放送・サービスの創造」日本放送協会 技術局専任局長 児玉 圭司氏
  • 15:55-16:40
    懇親会

奨励賞受賞の諸岡さんは、二人の子育てとの両立を実現する心構えとして「ライフスタイルは誰でも変わるものだから〜仕事は楽しく〜ライフは明るく〜をモットーに充実した毎日を送られています。そのなかでも『出来ない理由はない。・・・探せばいろいろ方法はある。「女性だから」はありません』というメッセージ。
また、審査員特別賞の矢野さんは、ワークとライフと労働組合という3つをフル稼働し、「与えられた環境で最高のパフォーマンスを」というメッセージが印象的でした。

NHK技術局専任局長の児玉圭司さまからは、放送技術の歴史、新技術や、放送を取り巻く環境変化にともなう公共放送から公共メディアへの変化、またNHKのWLB、女性活躍推進への取り組みについてもお話しいただきました。その後の懇親会も含め、大変有意義な会となりました。後日詳細報告を予定しております。

本日は諸岡さん、矢野さん、本当におめでとうございました!

JWEF運営委員 弥富洋子

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