JWEF女性技術者に贈る奨励賞授賞式と記念シンポジウム開催報告 #JWEF

点線

2012年10月7日(日)東京大学工学部11号館講堂にて、第4回JWEF 女性技術者に贈る奨励賞(JWEF奨励賞)の授賞式および記念シンポジウムが行われました。朝は小雨も降っていましたが、徐々に雨もあがり、東京大学校舎内の緑が映えるすがすがしい天気の中、64名(会員28名、一般36名)の参加者を得て行われました。

2012年度JWEF奨励賞は日本IBM株式会社にてハードウェア開発エンジニアとして活躍されている松井彩さんです。授賞式は、まず、渡辺美代子運営委員長よりJWEF奨励賞の選考方法と今年度の受賞について報告がありました。

選考方法の説明では、仕事の業績に加えて、本人の活動が周囲の女性技術者に対する評価や意識変革を起こすだけの積極性があるかが評価されること、またワークライフバランスも評価対象であることがJWEF奨励賞の特色であると述べられました。JWEF奨励賞は来年以降も募集しますので、多くの女性技術者に応募してほしいと呼び掛けられました。(図 参照)


(図 JWEF奨励賞選考の審査内容)

様々な技術課題に対して積極的にかつ自分にも厳しく取組む姿勢や、仕事と出産育児(現在2人目のお子さんの育児休業中!)との両立をはかっている点が、松井さんの受賞理由として述べられました。

続いて、本賞の創設者であり本賞の基金を拠出頂いたJWEFアドバイザリーボードである都河明子先生より、本賞の設立時の思いや、現在の女性の働きを後援する日本政府の取り組み、女性の活躍に期待する思い等を添えて、お祝いの言葉を頂きました。続いて、渡辺委員長より賞状と楯が、都河先生より副賞(10万円)が贈呈されました。さらに、昨年の受賞者からのお祝いとして、長曽我部より花束とメッセージを添えさせて頂きました。


(写真左より 渡辺JWEF運営委員長、松井さん、都河先生)

松井さんの受賞講演では、「エンジニアリング 多様なる面白さ!」と題して、入社から今に至るまでのお仕事とプライベートの楽しみについて、多くの写真を添えて、わかりやすくご紹介いただきました。大学院は、政策・メディア学科を卒業されていますが、最初に配属された品質管理部門で出会ったエレキハードに惹かれ、その後システム開発課のハードウェア開発に異動。これまでの専門とはあまりにも異なる為、この意外な転身に驚かされると同時に松井さんの意志の強さを感じるエピソードでした。そして、松井さんが苦労されながらも開発されたマルチコアCPUワークステーションという大きな基板を、嬉しそうに抱えて写る松井さんの姿が印象的な写真も紹介されました。また、2012年まで4年間事務局を勤められたIBMの全社横断での女性技術者コミュニティCOSMOSについてもご紹介いただき、社内の活性化にも積極的に貢献する様子が伺えました。講演全体を通じて、何に対してもポジティブに楽しく取り組む松井さん。とてもまぶしく輝いていました。

第二部の記念シンポジウムは、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA) 理事 田中久也氏から「ダイバーシティとプロフェッショナル」と題して、ITを取り巻く環境およびダイバーシティについて、さまざまなデータに基づきお話していただきました。まず、ダイバーシティが重要視されるに至る背景として、インターネットの普及が大きな鍵となっていること、SNSを通じて個人が世界に向けて情報を発信することでイノベーションが起こることについて言及されました。そして、IPAでは、日本発のイノベーションを支援していく為に、日本の優秀な技術者を発掘し育成していく取り組みを実施しており、次世代を担う技術者とその技術を紹介いただきました。そのイノベーションで日本が勝ち残っていくには、多様な人間の特異な才能を発揮できる様な社会であり企業である必要があり、そのためにダイバーシティマネジメントが重要な要素となる。そして、その第一歩として、人口の半分もいる女性がきちんと活躍できる様なダイバーシティマネジメントを考え、問題を洗い出し対応することで、おのずと多くの才能を持った人たちが活躍できる組織となる、と熱く語っていらっしゃいました。最後に、優秀な技術者に期待する3つのこととして、「人の3倍貢献してほしい」「楽しく仕事をしてほしい」「他人の価値観に縛られないでほしい」とおっしゃる田中さんから、日本の未来を担う技術者への強い愛情を感じつつ、幕を閉じました。

JWEF 運営委員 長曽我部 紀理子

次に、JWEF会員から寄せられた 松井さん、田中さんの講演の感想文を紹介します。

JWEF奨励賞授賞式「エンジニアリング 多様なる面白さ!」感想

JWEF会員 三反畑 尚代

今回の感想を書くにあたって、受賞される松井さんの経歴を見ようと、JWEFのHPを開きました。そこには、可憐なお嬢様といってもおかしくない、松井さんの写真と紹介がありました。お仕事はハードウェア開発のエンジニア。責任の重い仕事をどうやってこなしていかれるのか、お話をお聞きしたくて、心待ちにしていました。

初めに、ご経歴についてお話されたのですが、「とにかく仕事が面白い。」と目を輝かせてお話しされていたのが、とても印象的でした。これまでに取り組んで来られたお仕事では、プロジェクトに女性がいないのは気にならないそうで、すごいな、と感心しました。また、ご自分でご設計した製品が、量産テーブルに乗ると言う事は、かわいい娘を嫁に出すような気持ちだとおっしゃっていました。松井さんが、本当に強い情熱と、仕事に対する愛着を持っていらっしゃることが伝わって来ました。

きっと仕事上、大きな壁にぶつかったこともあるのでしょうが、それを乗り越えた時に得られる喜びは、それ以上に大きかったのでしょうね。

お仕事を終えられてから、家族と会うのがとても楽しみとおっしゃっていました。実は、講演会で私が座った席の後ろには、松井さんのご主人とその膝の上で、塗り絵をしている娘さんがいらっしゃいました。とてもいい子でかわいくて、お仕事のOFFの時に、家族と一緒の時間を大切にされている様子が目に浮かびました。

最後に語られた印象的な言葉。「世界初、業界初を目指してきたが、今は世界最強のチームを作りたい。」とおっしゃる松井さん。講演中も笑顔を絶やさず、目をキラキラさせていた松井さん。きっと周りの仕事仲間も、その笑顔にどんどん引き込まれていくのだと思いました。人と人とのつながりを大切にして目標に向かって走り続ける松井さんの、さらなるご活躍をお祈りします。素晴らしい講演をありがとうございました。


(写真:松井さん講演オープニング風景)

記念シンポジウム「ダイバーシティとプロフェッショナル」感想

JWEF会員 吉田 睦子

IPA田中理事のお話は、IT業界の環境改善と発展のために、具体的にどのような施策がなされているかというものでした。その中で特に興味を抱いたのは、日本発イノベーション創出のために、25歳以下の若者からスーパークリエーター、若き天才を見出し支援していくという活動です。三人の受賞者の例を挙げていましたが、どの方も驚くような発想で夢を形にしていたようです。中には女性の受賞者もいました。

残念ながら女性の応募者は二割程度ということでした。先に受賞講演をされていた松井さんが会社に入って初めて基板の面白さに気付いたとおっしゃっていたように、子供の頃からどんなことに接しているかで、将来関わる仕事の幅を決めることになるのだろうと聞きながら思いました。

IPAの行う、大学生などへの啓もう活動やキャリア検討委員会からの企業への働きかけなどにより、女性の働く環境が改善され、さらに多様な人材、突出した人材が育っていくことに可能性を感じさせていただいた田中理事のお話でした。管理職昇格の際の男性上司の意識改善「プロポーズは3回」、女性自身の意識改善「二つ返事でOKしよう」は、真に現場を知る田中理事ならではのアドバイスだと思いました。


(写真:女性技術者に激励を送られる田中さん)

▶ 「2012年活動実績」ページに戻る

Copyright © Japan Women Engineers Forum. All rights reserved.