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今回は、千葉県野田市のキッコーマンの工場を訪問しました。工場の門をくぐるとすぐに、香ばしい醤油の香りが漂ってきました。工場には縦長の大きなタンクがずらりと並んでいるようすが見られました。「あの大きなタンクにはどんなものが入っているのだろう?」という好奇心を胸に、工場の中へ入りました。
まず、ミニシアターに入り、醤油のルーツと製造法についての映像を見ました。野田では、約400年前に醤油が作られ始めたそうです。野田は江戸川に近く、製品を江戸に運搬するのに便利な土地だったそうです。また、醤油の原料を調達するのにも良い立地で、塩は江戸川の河口、大豆は常陸地方、小麦は下総台地や上州・相模のものを利用していたそうです。「なぜ工場が野田にあるのだろう」という素朴な疑問が、ここで解決されました。
次に、醤油の製造工程の見学に入りました。醤油は、大まかに次の(1)〜(5)のステップを経て製造されます。製造期間は6〜10ヶ月かかるそうです。
お昼に醤油もろみ弁当を堪能し、午後は御用蔵を見学しました。
御用蔵とは宮内庁に納める醤油の専用醸造所です。蔵の中には、建設当時の装置や道具が詰まっており、工場とは一味違う醤油造りの現場を見ることができました。また、醤油造りを担っていた熟練者の作業風景を映像で見ることができましたが、スコップを使って麹を絶えず混ぜ合わせたり、熟成させたもろみを袋に詰めたり等、土木工事のように重労働であることが伺えました。昔は、就職してから退職するまで1つの工程で作業をし続けたそうで、もろみを袋に詰める作業では、新人が2日かかる作業を、熟練者は1日もかからず仕上げることができたそうです。
見学に行く前は、工場というと、醤油が“機械的”に素早く造られていくイメージがありました。しかし、もろみの発酵する様子を見たとき、やはり醤油は“生きもの”によって作られているのだということ、工場という場にも自然の力が必要なのだということを実感しました。また、微生物だけでなく、先人たちの苦労や努力によって日本の食文化や自分自身の食生活が成り立っていることを知りました。非常に充実した工場見学会でした。(報告 東京農工大学 栗原 慧那さん)