9月20日 定例会の報告

点線

講演会

5才の時から食べ物に興味を持ち始めた井出さんは、それを人生の核として持ち続け、様々なターニングポイントで一歩踏み出す力としていきます。日用品メーカーでの肌研究と介護用品の開発と、老人ホームでの介護ボランティアの経験から、人の役に立つ仕事がしたいとの思いに至り、青年海外協力隊に入りました。そこではフィリピンの人達の栄養状態を改善する仕事に打ち込みますが、精神的なダメージから帰国を余儀なくされ、再就職が決まるまでの5ヶ月間死を思うような苦しみを味わいます。そこから現在の職場、日本ケロッグにたまたま入社し(ご本人曰く)、お客様対応や広報のアシスタントを始めました。ここでは、お客様に話せる知識・情報の不足から大学で学ぼうという決意をし、働きながら女子栄養大学の修士及び博士課程に進みます。この時の研究テーマは「シリアルと肌」。自社商品を用いた臨床試験において、明らかに玄米シリアルで肌の改善が見られたという結果を出し、現在では自ら日本ケロッグの広告塔としてご活躍なさっています。

井出さんには以下のような二つの質問を投げかけていました。それに対するお答えです。

技術職の方へのアドバイス

  1. 伝える力が必要。 研究や技術内容をまず伝えたいと思うことが大切
  2. 英語の必要性。 研究・仕事内容を日本だけでなく世界で共有できるすばらしさ
  3. 常識を打開する。 前例が無いことでもOK、常識にとらわれないこと

才能を生かすために心がけてほしいこと

  1. 心の声に従う 。 私は「食べもの」だった。それを継続することは間違いないとの思い
  2. 一見ネガティブに見えることも実はネガティブではない。博士でもない人に講演させないと言われ発奮
  3. 積み重ねて実現に至る快感。 時間をかけて実現することがある。「君の思いは必ず実現する」「ガキの自叙伝」(稲盛和夫著)のご紹介
  4. 自分の個性を見つける。 私は持久力、体力があり、勉強好きであった。
  5. 自己効力感(Self efficacy)。根拠の無い自信をもつ。

講演会

20代の学生、新社会人から60代まで、理学・工学・機械・情報系から医学・薬学・栄養・食品系まで様々な分野の方が集まりました。まず参加者全員の自己紹介と、社会人大学院や転職についてご存じのこと、井出さんへの質問などを話していただきました。次に社会人大学院に進学する場合の具体例、時間の使い方、会社との関係、費用について等、井出さんを含めいくつもの意見が出されました。また、女性が頑張り過ぎて挫折した時について、精神的に立ち直るきっかけや協力者についてのお話や、一転して食品会社のクレーム処理についての興味深いお話もありました。懇親会でも会員、非会員同士の交流が図られ、最後まで在席していただいた井出さんとお話できました。井出さんの論文や日本ケロッグの新商品の手みやげもいただきました。

皆さんからの感想

司会運営の私自身、井出さんのお話を聞きながら目頭が熱くなって困りました。以下にお寄せいただいた何人かのご感想を付記して報告を終了します。

*今の自分の状況にとても合った良い講演でした。井出さんは20代で自分の軸というものを見つけられて、その声に従って頑張ってこられた。自分もしっかり軸を定めたいと思いました。(40代)

*私たちと等身大で語ってくれて、すぐにでも自分のこれからに参考にできる内容だったので良かったです。著名な人を呼ぶよりも、とても身近に感じられました。(40代)

*精神的ダメージから立ち上がる時期に面接し採用した日本ケロッグさんの選択・決断もすばらしいですね。(50代)

*講演内容はとてもわかりやすく、普段、栄養や食物の科学的なことにかかわりのない私でもとても楽しくうかがいました。講師の先生のとてもエネルギッシュな生き方に感銘を受けました。大学院の情報は今後のキャリアパスプランの参考にさせていただきます。(40代)

*講演会と座談会に参加して、井出さんや他の参加者の勢いに押され、私も学位取得のために頑張らないといけないという気持ちになりました。私自身は、大学にいるということで学位を取る事が必要であるため、大学院に通いやすい環境であることに改めて感じました。また機会があれば参加したいです。(20代)

*井出様のご講演は、仕事について考えさせられる貴重なお話でした。入社したばかりで、転職や人生についてもまだ実感がないのですが、今後仕事をしていく上で大いに役立てたいと思います。そして入社したばかりだからこそ、今後の自分や将来のことを不安に思う気持ちもあり、「一生をかけていけばいい」というお話に感銘を受けました。様々な経験をされている井出様の言葉だからこそ、胸に響くものだったのだと思います。参加されていた皆様、職種や経歴も様々で、お話を聞くことができてとても楽しかったです。またこのような機会があれば参加させていただきたいと思いました。(20代)

*なかなか一歩前に踏み出せない私と異なり物事に対する積極的な井出さんの姿勢に尊敬の念を抱きました。仕事に対してもプライベートでも「誰にも負けないコレ」といったものがなく、自分の存在意義が見えず不安な日々なのですが、一生かかって何かのプロになればいいのだとお話くださり気持ちが楽になりました。井出さんや参加者のみなさんのように魅力的な年の重ね方をしていきたいと思いました。(20代)

*さまざまな転機があり現在に至る先生のお話は、働く女性として興味深いものでした。まだ仕事を始めたばかりで転職や仕事をしながら勉強をするなど考える余裕がないというのが現状ですが、勉強になりました。また、個人的にはケロッグの研究についても興味を持ちました。(玄米フレークがお肌に良いという研究。早速買ってみようと思いました。)(20代)

*まず、集まっていた方々の意識の高さに、圧倒されてしまいました。常に、向上心を持ち、現状に満足せず常にレベルアップして、より良い方向へ進むことを目指して生活されている方が、多いのだと感じました。講師の方の講演を聞き、さまざまな生き方があるのだと感じました。世間体や他人からの目ばかりを気にするのではなく、自分自身にとっての幸せや自分の今の行動に対して、目的を持ち、自信を持ち生活をすることが、本当の幸せにつながるのではないかと感じました。(常識ばかりにとらわれず、視野を広く持ち、行動することが必要なのだと感じました。)また、人間は、様々なことが転機となり、生きる方向を決めているのだと感じました。私は、どちらかというと、物事をやる前に、「私には無理なのでは・・・」と考えてしまい、実行に移せないことがしばしばあります。そのため、今回の講演や皆さんのお話を伺い、もっと、物事を前向きに(ポジティブに)考えていくことが必要なのだと思い、大変勉強になりました。また、国籍を問わず多くの人と交流を持つためには、やはり、英語の力は大切なのだと感じました。私は英語が苦手科目ですが、少しでも苦手を克服して、今後仕事でどのようなお客さんが来ても対応できるようにしていかなければならないと改めて感じました。(20代)

*座談会では講師の先生をはじめとした参加者の皆様のご経験を踏まえたお話をお聞きすることができて参考になりました。お時間があったら、参加者皆様の転職等のお話をもう少し詳しくお聞きしたかったです。(20代)

*身近に、海外青年協力隊に参加経験のある人、会社内でDoctorを取得した人が複数いるので、身近な話題として拝聴しました。私の勤める電気メーカーでは、仕事上で研究・開発した内容を論文にまとめてドクターを取る、といういわゆる論文ドクター(今後は論文ドクターが無くなる方向ですが)なので、大学でステップアップして仕事に生かす、というケースではありません。講師の方のお話のように、仕事をステップアップするために必要なカリキュラムを大学に行って聴講したり、仕事をしながら大学に通ってMaster、Doctorを取得することができたら、とてもいいな、と思いました。Doctorを取得した方々を見ていると、モチベーションを非常に高く維持しているように見受けられます。また、仕事面でも客先へのアピール度が違いますので、会社にとってもメリットがあります。また、学会の役員を通して、電機業界に貢献している人、退職後大学で講師や助手をしたり、早期退職して高専で教えていたり、会社卒業後の第2の人生に生かしている人もいます。人を育てることは、結局、企業の発展と社会への貢献に繋がるのでは、と思います。また、講師の方がとても自然体で常に前向きに、自分の才能を開花させていっていらっしゃることに感銘しました。技術者にとって大事なこととして、1.発信する、伝える力、2.英語の必要性、3.常識を打開する、をあげられていました。私も早速、日頃痛感している英語能力の低さを少しでも打破するために、通勤の電車内で英語Writingのドリルを始めました。年齢を重ねていますので、長足の進歩はありませんが、日々の積み重ねが大きな違いを生む、という講師の言葉を思い出しながら、少しずつでも進歩があれば、と思います。(40代)

懇話会風景

ご講演されている井出様。

▶ 「2008年活動実績」ページに戻る

Copyright © Japan Women Engineers Forum. All rights reserved.