2008年第1回見学会・講演会の報告

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夏休みの終わりに近い8月23日に株式会社東芝のご協力を得て、下記のとおりに2008年度第1回見学会 ・講演会を開催しました。

【日時】2008年8月23日 13時30分―16時30分
【場所】川崎市小向東芝町株式会社東芝小向工場内
【見学会】東芝科学館 13時30分から1時間の間、人と科学のふれあいをテーマとした科学館を訪問しました。
「創業者の部屋」からスタートして、「東芝1号機ものがたり」、東芝の医療コーナー、デジタル技術を中心とした近未来技術、エネルギー・環境技術コーナーなどアテンダントの親切な、そして熱意に溢れた説明に沿って親子揃って見学できました。その後、30分は個人が夫々興味ある展示物を見学して、科学館訪問を終了しました。

参加者の記念写真

【講演会】場所 研究開発センタ一階 第一会議室
【講師】株式会社東芝 多様性推進部長 岩切貴乃様
【時間】15時から16時30分まで

講演概要

東芝グループの創立1875年から今日に至る長い歴史、19万8千人近い従業員数(2008年3月時点、グローバル)、そして、多岐に亘る事業分野内容、及び実績の紹介で、聴衆に対して東芝グループについての基礎的な情報の説明があった後、本題の多様性推進の取り組みについて講演があった。

1. 多様性推進部設立の経緯:2001年の大量退職、そして残された従業員のモラル低下の対策として発足した組織活性化プロジェクトで、2003年、初めて従業員意識調査(TEAM Survey: Toshiba Employee Activity & Morale Survey)を実施. その結果、「仕事のやりがい」や会社の処遇制度に対する理解に関し、男女間で理解に大きな開きがあることが判明。 この対策として2004年10月、岡村社長(当時)の指揮の下に男女共同参画推進組織、“きらめきライフ&キャリア推進室(以下、きら推と略記)”が設立された。

2. 多様性推進部の動き:従業員一人ひとりが共に自分らしく、持てる力を十分に発揮する組織・風土の実現、と言うスローガンのもと、きら推設立の2004年から2007年3月までは 1). 女性従業員のステップアップ支援、と、2). ワーク・ライフ・バランスの実現、そして3). 意識・風土の改革を中心に活動。 その後、2007年4月から多様性推進部として、対象を拡げ 1). 多様性の受容と尊重、2).ワーク・スタイル・イノベーションの実現、そして3). 意識・風土の改革を目指し、制度体系、仕組みつくり、インフラ整備を含む「コンセプト作りから、仕組み作りまで」をスルーして行う組織として活動を実施している。

3. 多様性推進部設立の位置づけ:少子高齢化、グローバル化、そして、企業の社会的責任・遵法が必要となっている産業界において、東芝グループが国際競争力を持ち、利益ある持続的成長をし続けるための経営戦略として、多様性(Diversity)の重要性が明確に打ち出され、その実行組織としての多様性推進部の活動が認識されている。

4. 東芝グループでの多様性推進部の活動
1)多様性の受容と尊重:社会の多様化への対応で、時代を先取りした経営施策を実行。女性、外国人、障がい者など、多様な従業員の積極的活動支援、ニーズ・視点の経営への反映、社会進出要求への対応、を行う。

女性の活躍支援(時限措置として階層別の女性従業員向け研修の開催)としてきらめき塾、きらめき講座を開催。障がい者の採用と定着。特に障害を持つ従業員との情報交換会を実施して、障がい者の立場に立った働く場の提供を模索。外国人の採用と定着。 特にグローバルに活躍出来る人財の育成を図る。

2)ワーク・ライフ・バランスからワーク・スタイル・イノベーションへ両立支援制度の整備・普及により、男女共にワーク・ライフ・バランス実現可能な会社作りを実施。メリハリのある仕事、リフレッシュの推進。Team Management やSelf Managementを通して個人の仕事の進め方の変革と各職場での仕事の仕組み・仕方の総点検を行う。

3)意識・風土の改革
グループ全体での理解向上のための情報共有、広報活動、仕組み作りを実施'きらめき大使(多様性推進主務担当者)'の協力を得て各組織内での推進活動の常態化の深耕、各カンパニー・分社会社(グループ会社)のトップマネジメントを集めてのアドバイザリー・コミッティ開催。

【サマリー・多様性推進に当たり最も重要なことは】

1)経営トップが危機意識を示すこと。 1980年代初頭は片働き世帯が共働き世帯の倍の数であったが1997年以降は共働き世帯数が片働き世帯数を超えているという事実が示すように、社会は急激に変化している。企業がこのような変化やそれに伴う時代の要請を理解し、正しい経営施策をとることが重要になっている。
2)管理職が部下の考え・行動を理解し、行動を変えること。
3)従業員自身も考え方・行動を変える。

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岩切貴乃様 株式会社東芝 多様性推進部部長
略歴:1983年入社。
研究開発センターに配属、念願だった技術職に。その後、商品企画、マーケティング、グローバルセールス、経営企画などを経て2004年10月「きらめきライフ&キャリア推進室」を兼務。2007年4月より多様性推進部長。

JWEFの感想

グループ全体で19万余、アジア、北米、欧州とグローバルに事業を展開、デジタルプロダクツ、社会インフラ、電子デバイス、等、極めて異なる企業文化を持つ顧客を相手にビジネスを展開している東芝グループでの多様性推進を進める岩切様の中身の濃い、熱意ある講演で講演時間が瞬く間に過ぎてしまった。
経営トップが問題意識を持つように地道に仕掛けや機会を作る努力、そして、決して押し付けではなく、現場で働く女性、障害者、外国人との密な会話をすることで、そこに横たわる問題や課題を吸い上げ、絶え間ない努力をされた岩切様のエネルギーを参加者一人ひとりが感じとり、それぞれ自分の環境に戻り、東芝グループが経験された内容を改めて理解し、これからの進め方を検討している。この意味からとても強い影響力を与えてもらった講演会であった。

懇話会風景

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